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兵庫県丹波市・上新庄式三番叟の進行

上新庄式三番叟についての記事も3回目です。今回が本番の、当日の進行についてのレポートです。2016年10月8日(土)夜20時からの宵宮奉納に基づいて書いています。

上新庄式三番叟の概要については前々回を、各役の構成については前回をご覧ください。

口上~千歳

カゲ打ちが「東西東西、式三番叟、始まり始まり」と口上を述べ拍子木を打つと、舞台後方の雛壇に小謡と囃子が並び、舞台に千歳・翁・三番叟が座って、式三番叟の開始です。なお、面箱は最初からカゲ打ちの隣においてあり、千歳は持って出ません。

詞章は聞き取れていない部分もあるのですが、観世流の《翁》とほぼ同じでした。喜多慶治『兵庫県民俗芸能誌』(錦正社、1977年)によると、観世流《神歌》四日之式とのこと。観世流が使用されているのは、最も広く出版されて、手に入れやすかったためでしょうか。

翁が「とうとうたらり」と謡いだすと、小謡が高い声で応えて千歳が舞い始めるまでは掛合に。この日は、小謡の一人が、一句先走って謡ってしまいましたが、改めて謡い直すことで問題なし。周囲の見守る温かい空気を感じました。

千歳は舞になると、立ってすぐ腕を左右に出し体も同じ方向をさす動きを繰り返します。また舞の最後に足拍子を連続で打っていましたが、このあたりは能楽の《翁》と共通です。一方で、足を交差させた上で反り返る動きが頻出し、こちらは目に新しい。なかなか難しい動きだなと感じました。

千歳が舞い終えると、カゲ打ちが面箱を千歳に渡し、千歳が改めて翁の前に置いて、千歳と翁が向き合って拝礼します。やはり面箱持ちは本来、千歳の役目だということでしょう。(能楽の金春流・金剛流・喜多流の《翁》は、千歳が面箱を持って出ます。)

改めて翁が面箱を持ち上げて礼をしてから、白色尉の面をつけます。面には袱紗がかけられており、その袱紗ごと顔にあてて、翁の後ろに回ったカゲ打ち紐を結ぶと、翁は袱紗だけを面箱に収めます。翁面は能楽のものと比べるとかなり大振りで、顔は完全に隠れています。その面箱をカゲ打ちが片づけると鼓が打ち出し「総角やとんどや」と翁の舞が始まります。

翁(これは三番叟にもありました)鼓に合わせ少しずつ足を動かす演技があり、これはもしかしたら乱拍子かもしれません。もっとも、能《道成寺》の乱拍子しか直に見たことはないので自信はありません。最近、沖本幸子『乱舞の中世 白拍子・乱拍子・猿楽』(吉川弘文館、2016年)を読んだので、そのように見てしまうからかもしれません。

翁が舞い終わると、面箱を収める所作は、つけるときの所作の全く逆をそのままに。そして面箱をカゲ打ちに渡すと、正面に拝をして、翁は退場。

三番叟

激しくツケと鼓、そして笛が吹き出すと、三番叟が舞台正面に飛び出して揉之段が始まります。上新庄式三番叟では、笛は三番叟になってから吹きだします。

三番叟は足を上げる動きがかなり多かったです。両足を上げることもあって、蹴り上げるような動作となり、かなりアクロバティック。能管でなく篠笛なので、より農耕儀礼という雰囲気が強くなるようなと個人的には感じていました。

揉之段が終わると、三番叟は黒色尉の面をかけるのですが、翁の白色尉が面箱に入れられていたのに対して、黒色尉面は、カゲ打ちの隣に鈴と一緒に床に置かれていて、扱いに差がありました。白色尉面が木製なのに対して、上新庄の黒色尉面は、紙で作られた張り子のようで、そのあたりから扱いの差があるようでした。

三番叟が面をつけると、千歳には鈴が渡され、千歳と三番叟の間で問答が行われた後、鈴を三番叟が受け取るのは、能楽と同様。三番叟が鈴を振りながら舞う鈴之段で、式三番叟のすべてが終わるのでした。

前回の記事
兵庫県丹波市・上新庄式三番叟を見てきました
兵庫県丹波市・上新庄式三番叟の構成

続きの記事
兵庫県丹波市・上新庄式三番叟に感じた「祈り」

この記事を書いた人

朝原広基

「能楽と郷土を知る会」会員。ネットを中心に「柏木ゆげひ」名義も使用。兵庫県三田市出身・在住。大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜となる。能楽からの視点で、歴史の掘り起こしをライフワークにすべく活動中。詳細は[プロフィール]をご覧ください。

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