兵庫県丹波市・上新庄式三番叟の構成

さて、前回に続いて、10月8日(土)夜20時から拝見してきた上新庄式三番叟のレポートです。
当日の進行の前に、それぞれの役割を記します。なお、全体的な構成は能楽の《翁》(《式三番》)に準じた形になっていますが、異なる点もあります。
「千歳」「翁」「三番叟」
舞手です。この順番に舞います。翁は大人ですが、千歳は小学校低学年、三番叟は小学校高学年の子どもさんが勤めます。
翁は海老茶の狩衣に同じ色の袴を履き烏帽子をかぶります。翁烏帽子というよりは、普通の烏帽子に見えました。
千歳と三番叟は基本的に装束は同じ。着物の形がはっきり分からないのですが、青地の狩衣のように見えました。ただし、千歳は前を垂らしますが、三番叟は帯の中に入れて着ています。同じ色・模様の袴を履きます。頭にかぶるのは千歳が侍烏帽子、三番叟が金と黒の縞模様に日の丸の入った剣先烏帽子です。
囃子
笛と小鼓で、大鼓はなし。笛は五人、小鼓は二名。笛は能管ではなく篠笛でした。いずれも大人が担当します。
ニ引が染め抜かれた茶の裃の上を付け、袴も履きますが、上と下は揃いではありません。(文楽の太夫さんがよく揃いでない裃を着てらっしゃるのを連想しました)
地謡
小学校低学年の子どもたち4人で構成された「小謡」と、大人で構成された「大謡」があります。
千歳が舞い出す前までの地謡を小謡が担当し、それ以降の地は大謡の担当。小謡は亀甲の柄の揃いの長着を着流で着ていました。
一方の大謡は幕内で謡うため、装束も人数も分かりませんでした。ただし人数は4~5名とのことです。装束は囃子方に準ずるのではないかな、と想像しています。
カゲ打ち
歌舞伎などでいう「ツケ」を打つ役で、この役の存在が能楽の《翁》との最大の違いでしょう。
カゲ打ちとはいうものの、式三番叟の開始を告げる口上を述べるほか、式三番叟の最中は舞台上手で、ツケを打ち続けるため、大変目立つ役です。道具の出し入れや面の紐を締めるなど後見の仕事も担当していました。
ツケの打ち方で「きっかけ」を作ることで舞手や囃子に指示を出すこともしており、式三番叟がスムーズに進行するかどうかは、このカゲ打ちに掛かっているように見受けられました。
装束は紺の長着を着流しに着て、たすき掛けです。
『兵庫県民俗芸能誌』によると、このカゲ打ちを行った人が、次に「翁」をつとめるのだそうです。
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→兵庫県丹波市・上新庄式三番叟を見てきました