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平荘小学校の狂言教室

平荘小学校 狂言発表会 平之荘神社能舞台

兵庫県加古川市平荘町・平荘小学校の6年生が、卒業直前の2月に、学校のすぐ隣にある平之荘神社の能舞台で狂言を披露する取り組みが平成12年(2000年)から続けられています。

兵庫県内、特に東播磨地域の神社には、能舞台が数多く存在していますが、地域が主体となって、能や狂言を稽古し披露する活動が継続的に行われているのは他にありません。

20年にわたって続けられていると、すでに”平荘小学校の伝統”となっています。児童たちは入学以来、6年生が演じる姿を毎年見ているので、「6年生になると狂言を演じるのが当然」だと思ってるとのこと。これが地域に根付くということかな、と思っています。

指導されているのは、兵庫県内在住(丹波篠山市)の能楽師狂言方大蔵流・山口耕道先生です。

能楽と郷土を知る会の朝原が、平荘町で子ども狂言が行われていることを知ったのは、平成23年(2011年)のこと。そのころ、兵庫県内の能舞台を調べて回っており、平之荘神社の大西宮司から翌平成24年2月に開催されることを教えていただきました。

平荘小学校の校長先生と耕道先生にお手紙を書き、お稽古から見学させていただく許可をいただいて、半ば押しかけアシスタントをさせていただいたり、平成12年に始まったころの校長先生にお目にかかって、始める際のご苦労などのお話をうかがう機会もいただきました。

始めは、指導いただく狂言方を探そうにも全くツテがなかったとか。また、最初の年は着物がなくて体操服の上から神社の法被をかぶって演じた話なども伺いました。現在は浴衣に剣道の袴、そして児童たちが自作した肩衣という出立で演じられています。

後援会の発足と、研修会

5年前の平成28年(2016年)には、地域の方々による「平荘狂言教室後援会」も発足し、ますます活発に活動を行われている平荘小学校の狂言教室。

その後援会発足後の、初めての研修会の講師を、山口耕道先生にご紹介いただき、朝原が担当させていただくことになりました。

いただいたテーマは「狂言のルーツを探る」。正直、朝原には荷が重いテーマでしたが、能楽、そして狂言の全体の歴史を紹介し、その中でも兵庫県地域との関わりと具体的なお話から紹介しました。

兵庫県、特に東播磨地域には多くの神社の境内に能舞台が残っており、これは何よりも地域に能や狂言が根付いていた証拠であって、それを活用している平荘狂言教室の価値を語るような内容となりました。

江戸時代、平荘の隣町である上荘町には野口源太夫といった能役者が住んでいて(『播磨鑑』など)、朝原の本拠である三田まで奉納などに来ていた記録があることにも触れて、こうして呼んでいただいたことも、昔からのご縁なのかもしれない…と少々ロマンチックなことを申しておりました。

平荘小学校は児童数減少などにより、数年後には、隣の上荘小学校と合併することが決まっており、両町そろって能楽との縁があることを紹介できたのは、将来の継続を見据えるうえでは良い話だったようで、喜んでいただけた様子でした。

平荘での狂言教室が、これからも末長く活動が続きますよう祈っています。

平荘狂言教室後援会 研修会

平荘狂言教室後援会 伝統文化研修会

この記事を書いた人

朝原広基

「能楽と郷土を知る会」代表。ネットを中心に「柏木ゆげひ」名義も使用。兵庫県三田市出身・在住。大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜となる。能楽からの視点で、歴史の掘り起こしをライフワークにすべく活動中。詳細は[プロフィール]をご覧ください。

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