300年ぶりの上演 神戸三田ゆかりの幻の能《鼓の瀧》 第3回能楽と郷土を知る会公演
能楽と郷土を知る会は、兵庫県三田市を拠点に、地域に伝わる能楽の記録や記憶を掘り起こし、地域の歴史と一体として広めることを目的として、平成28年(2016年)より活動を始めました。
普段は講座や、小中学生向けの能や狂言の教室を開催しておりますが、今回、3回目の公演を開催させていただきます。
今回は、有馬郡(現・神戸三田地域)ゆかりの幻の能《鼓の瀧》を上演します。《鼓の瀧》は、月光に照らされる夜桜の下、瀧祭ノ神が姿を現し、様々な和歌や漢詩を踏まえた美しい言葉と舞楽で世の中を寿ぐ祝言能です。
能楽の大成者・世阿弥の芸談『申楽談儀』にも記される由緒ある能ですが、戦国時代以後、上演が絶えてしまいました。江戸時代の正徳年間(1711~16)に数回の上演が確認できますが、再び退転し、今回は約300年ぶりの復活上演となります。
当日は、関連する講談《西行鼓ヶ滝》と共に上演し、伝統芸と地域の関わりについて、思いをはせる機会としたいと思います。
日時
令和4年11月22日(火)開演13時30分(開場13時00分)
会場
郷の音ホール(三田市総合文化センター)大ホール(兵庫県三田市天神1丁目3番1号)
チケット取り扱い
・郷の音ホールチケットセンター 079-559-8101
・Peatix(オンラインチケット) https://tsudumi-no-taki2022.peatix.com/
・能楽と郷土を知る会 info@nohgaku-kyodo.com
チケット料金
・S席 6,000円
・A席 5,000円
・B席 3,000円
当日券は各+500円
・オンライン配信チケット(アーカイブあり) 3,500円(Peatixでのみの販売)
開催概要
主催:能楽と郷土を知る会
協賛:株式会社三田屋本店
後援:三田市、三田市教育委員会、神戸新聞社、サンテレビジョン、ハニーFM
内容
講談《西行鼓ヶ滝》旭堂南龍
解説「鼓の瀧」について
山中雅志(能楽師シテ方観世流)
旭堂南龍(上方講談師)
[三田藩ゆかりの演目]
仕舞《難波》上田拓司
仕舞《屋島》藤井丈雄
仕舞《杜若》山田薫
仕舞《融》山階彌右衛門
地謡:今村哲朗・武田祥照・上野朝彦・上田顕崇
復曲能《鼓の瀧》
シテ(老人/瀧祭ノ神) 山中雅志
ツレ(男) 林本大
ワキ(臣下) 江崎欽次朗
ワキツレ(臣下ノ従者) 松本義昭・江崎正左衛門
アイ(所ノ者) 善竹忠亮
笛 野口亮
小鼓 成田達志
大鼓 森山泰幸
太鼓 上田慎也
後見 山階彌右衛門・長山耕三・今村哲朗
地謡 藤井完治・上田拓司・生一知哉・井戸良祐・山田薫・上野雄介・藤井丈雄・笠田祐樹
(特別監修:山階彌右衛門[能楽師シテ方観世流]・西野春雄[法政大学名誉教授]
能本作成:朝原広基[能楽研究者]
節付・型付参与:山中雅志[能楽師シテ方観世流])
演目について
講談《西行鼓ヶ滝(さいぎょうつづみがたき)》
若き日の西行法師は、歌の修業として日本各地を旅する中で、歌の名所と謳われる摂津の鼓ヶ滝を訪れて次のような和歌を詠みます。
「伝え聞く鼓ヶ滝に来て見れば沢辺に咲きしたんぽぽの花」
しかし、その帰りに……。
[三田藩ゆかりの演目]
文政2年(1819年)正月26日に、三田藩八代藩主・九鬼隆邑の90歳祝賀能が、三田陣屋(三田城)の書院で催されています。その際に上演された能が《難波》《八島》《杜若》《船弁慶》《融》でした。
昨年の「第2回 能楽と郷土を知る会公演」でも、上記の記録に基づいて《船弁慶》の上演を行いましたので、今年はそれ以外の演目を、紋付袴姿で地謡のみで舞う「仕舞」という形式でご覧いただきます。
復曲能《鼓の瀧(つづみのたき)》
(作者:不明[世阿弥とする説もあり] 原典:『金葉和歌集』『拾遺和歌集』など)
都の朝臣たちが花見の途中、摂津国(現在の大阪府・兵庫県の一部)の鼓の山(有馬山)に迷い込む。途中で出会った老人は、朝臣たちに山の名前を教え、鼓の瀧へ案内する。老人はこの滝は「津の国の鼓の瀧をうち見ればただ山川のなるにぞありける」と古い和歌にも詠まれていることを語り、有馬山の夜桜の美しさを褒め称える。さらに自分は滝祭の神だと明かし、滝壺に姿を消す。月の光に照らされる夜桜の下、滝祭の神が姿を現し、様々な舞楽を奏して、君の治世を寿ぐのだった。
現在も名所として知られる、有馬温泉の鼓ヶ瀧を舞台とした能の古曲です。世阿弥が記した書物にも記載があり、当時から謡われていたことが確実な、由緒のある演目ですが、ある時期から上演が絶えてしまいました。今回は約300年ぶりの復活上演となります。