大川瀬住吉神社の能舞台(舞殿)
三田市と能楽を語るならば、絶対に外せないのが、三田の奥・大川瀬にある住吉神社の能舞台です。
神社では舞殿と言っていますが、形式は能舞台です。何より重要なのは、現在もこの舞殿を使って約10年に一度の頻度で、能や狂言が演じられていることです。
神社文書によると享保11年(1726)に建てられたとされるこの舞殿は、兵庫県から重要有形文化財として指定されています。
この舞殿の正面には、神社の拝殿と本殿があって、向かい合う形になっています。残念ながら、三田市内には他の能舞台は存在しませんが、西隣の三木市・加東市・明石市など東播地方には多い形式で、関連があるのではないかと想像しています。
神前に奉納する芸能として始まった能楽の歴史を考えると、むしろ本来の形なのかもしれません。
最近の神能
最近で神能が行われたのは、平成25年(2013年)4月16日。《翁》大西智久・善竹隆司、能《高砂》今村哲朗、狂言《鬼瓦》善竹忠一郎、能《羽衣-和合之舞》小西博通、能《土蜘蛛-黒頭》大西礼久、能《猩々》宮下昌子(以上敬称略)という番組でした。一応、《翁》付五番能…を意識しているようですね。
《土蜘蛛》のように出演者が多い能になると、はっきり分かるのですが、能舞台の普通の寸法(本舞台のみで約5.4m四方)から比べると、この舞殿、かなり狭いのです。
『三田市史 別編2 三田の文化遺産』(2002年)に載っている寸法図によると、舞台全体で前後が5.515m(シテ柱より前だと4.03m)、左右が4.545mで、普通の寸法に比べると、7~8割ぐらいの大きさです。これは地方の舞台だから…なのでしょうか。気になるところです。
この舞殿には地謡座にあたる部分が存在しないので、神能の際には仮設で付け足されるようです。
楽屋となっている長床も古い建物で、改修などは加わっていますが、棟札によると舞殿よりも古い享保2年(1717)の建立とのことです。