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こうべさんだ子ども能楽塾(第1期)強制終了記

京都観世会館 能面・能姿ぬりえ

昨年(2019年)9月から今年(2020年)3月まで、月に2回のペースで、年長から小学校5年生の子どもたち相手にお稽古を進めてきた「こうべさんだ子ども能楽塾」。

発表会へお稽古の大詰めを迎えたころから、世の中で、新型コロナウイルスの拡大が顕著となり、お稽古場にしている「三田市フラワータウン市民センター」より、市民活動の自粛のお願いが届くようになりました。

人を集める形での発表会は、時節柄難しいだろう…と判断して、発表会は中止にしました。しかしながら、お稽古について「少人数制なので、消毒用アルコールや換気などの対策を行った上で、お稽古は予定通りに行う。ただし家庭の判断で休むことは妨げない」という方針を打ち出して、進めて参りました。

正直なところ、「ずっと待ちぼうけだったらどうしようか」という不安を抱きながら、お稽古場で待っていた3月10日。実際のところ、フタを開けたら出席率8割以上。この日は、子どもたちが楽しみながらお稽古してくれていることを感じて、本当に嬉しかったです。

しかしながら、その日のお稽古では、子どもたちからは発表会が中止になったことへの疑問の言葉が洩れ。世の中の様子を伺いつつも、あくまで最終的な決定をした身としては、本当に申し訳ない気持ちでした。

それでもお稽古は最後まで進める予定でしたが、無情にも3月13日には三田市より、屋内公共施設の利用停止が発表されました。

新型コロナウイルスの拡大防止は当然としても、9月から続けてきたお稽古が、中途半端なままに強制的に終了することが決定しました。一瞬、別の稽古場を確保して…という考えも頭をよぎりましたが、ここを無理して開催しても、無理が来ると断腸の思いで、強制中断を受け入れることとしました。

「能面ぬりえ」を配布する

そんな時、観世流能楽師・松井美樹さんが、Twitterで「能面ぬりえ」の紹介をされているのが目に入ってきました。

幸い、京都に近く参る予定がありましたので、その際に京都観世会館に足を延ばし、事務所にて「能面ぬりえ」を参加者の数だけ購入しました。もちろん発表会の代わりにはなりませんが、せめて能楽で遊んでもらえたら、という思いです。

参加者の子どもからの言葉にハッとする

数日後、能面ぬりえを能楽子ども教室の受講生に配布。市外から通っている子は郵送ですが、近い子は郵便代ももったいないないとポストに投函して回ったのですが、その翌日。参加者の子どもから私の携帯電話に着信があり。

出ると、参加者の小学1年生の女の子から「ぬりえ、もってきてくれて、ありがとー。これからも、おねがいしますー」と。…見事に心を射抜かれました。

この言葉は、思わずハッとしました。正直なところ、私は、新型コロナウイルスと行政の対応への不満にばかり目が行って、最初の思いを忘れていたのです。

「こうべさんだ子ども能楽塾」は何のために開催しているのか。もちろん、発表会も、お稽古も最後までやり通したかったです。

しかし、本当の目的は? この三田の地に能楽を定着させることだったはずです。能楽のお稽古を楽しんでくれている子がいることこそが、何よりの成果なのです。

今はその成果を胸に抱き、1日も早い新型コロナウイルスの終息を願い、その後の「こうべさんだ子ども能楽塾」第2期の再スタートへと思いを新たにしています。

この記事を書いた人

朝原広基

「能楽と郷土を知る会」会員。ネットを中心に「柏木ゆげひ」名義も使用。兵庫県三田市出身・在住。大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜となる。能楽からの視点で、歴史の掘り起こしをライフワークにすべく活動中。詳細は[プロフィール]をご覧ください。

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