兵庫県姫路市・英賀神社面掛式
今日は姫路市の英賀神社面掛式を拝見してきました。
英賀神社の氏子さんたちで構成された「英賀神社古典芸能の会」の主催で、奉納奉告神事の後、拝殿において、天下泰平・国土安穏を祈祷する能楽の儀礼曲《翁》を奉納するものです。翁の面をかけるので「面掛式」と呼ぶわけです。
ただし、舞うのは翁のみで、千歳は謡のみ、また囃子もありません。また三番叟(三番三)も行われていません。
13年前から姫路のワキ方福王流の江崎家が、11年前から翁大夫として大阪のシテ方観世流の井戸和男さんが奉仕されています。
使用される面は、江崎家が飛騨高山のある神社から譲り受けたというご神面で、少し小ぶりですが、古い素敵な面です。
《翁》は元日にも篠山の春日神社で拝見していますが、優しいめでたさを感じて、何度拝見しても良いものだなと感じました。
天気に恵まれ、比較的温かかったこともあって、多くの人が集まってらっしゃいました。「英賀神社古典芸能の会」の方々のご尽力が実られたものでしょう。
英賀神社の能楽上演記録
なお、昭和13年(1938)に刊行された『兵庫県神社誌』(兵庫県神職会:編纂)の英賀神社の項目に引かれた「神社調書」によると、10月18日の例祭の時に「能楽ありしも近来中絶」とあります。
中絶した「近来」がいつごろのことなのか、これだけでははっきりはしませんが、明治・大正時代ごろまで能楽の奉納が行われていたような書きぶりに感じます。正月と10月、時期は違いますが、かつて存在した奉納能の、部分的な復活になっているとしたら素敵だなと思いました。
一番上に掲げた写真は拝殿の屋根に掲げられていた謡の奉納額です。昭和43年(1968)に明治維新から100年となったことを記念して奉納されたものですね。これもかつて、この土地で能楽が盛んであったことの証拠の一つでしょうか。