復元能《綱》初演のアフタートークに参加させていただきます
室町時代後期の、能の各演目で使われる能装束について記した資料(装束付)『舞芸六輪之次第』にのみ記載が残る能《綱》。そこには前半のシテ(主人公)は姥(年を老いた女性)、後半のシテは鬼。そして綱役は太刀を持つと記されています。
綱は、平安時代中期の武将で、源頼光四天王筆頭として知られる渡辺綱のこと。そしてその綱と老女と鬼に関わる物語といえば、『平家物語』剣の巻や『太平記』に記された、綱が鬼の腕を斬り落とすものの、育ての親に化けた鬼に取り返される伝説でしょう。
この《綱》という能の本文は、残念ながら、今のところ全く見つかっていないのですが、装束付が残っている以上、確かに演じられていたと考えられます。
今は本文は見つかっていませんが、能から歌舞伎に作られた演目(松羽目もの)があることから、法政大学名誉教授の西野春雄先生が、渡辺綱の武勇を描いた長唄《綱館》は能《綱》などから詞章を取った可能性があるという仮説を立てられ、それに則って、西野先生が詞章を書きおろす形で”復元”が行われました。なお、既に綱が鬼の手を切り落とす能は《羅生門》として存在していますので、その後日談という形です。
そういう意味では創作された部分も多いのですが、できあがった詞章を読み、稽古を拝見させていただいた感想としては、平明な文章で、動きが多く、かつ能らしさも保った、なかなか意欲的で面白い能として結実したと感じています。
以前から謡の披露という部分的な上演は行われてきましたが、この6月、ついに能としてフルバージョンで一般向けに初演されます。
「能楽と郷土を知る会」の朝原も、能《綱》復元が決まった場にいさせていただいたことから、初演の後のアフタートークに参加させていただくことになりました。
この貴重な機会、是非ともご覧くださいませ。
公演詳細
令和に蘇る能《綱》
6月18日(金)18時半~。山中能舞台(大阪市阿倍野区阪南町6丁目5-8)
解説 西野春雄(法政大学名誉教授)
観世流仕舞《大江山》塩谷惠
観世流仕舞《土蜘蛛》山階彌右衛門・生一知哉
復元能《綱》
シテ(姥/茨木童子):山中雅志
ワキ(渡辺綱):原大
ワキツレ(綱の従者):原陸
アイ(安倍晴明の従者):善竹隆平
笛:貞光訓義
小鼓:荒木建作
大鼓:安福光雄
太鼓:中田弘美
後見:山階彌右衛門・生一知哉・山中迓晶
地謡:武田文志・武田宗典・林本大・武田祥照・山田薫・藤井丈雄
アフタートーク 西野春雄・福田祐美子(八尾市立しおんじやま古墳学習館学芸員)・朝原広基(能楽と郷土を知る会)
入場料
前売り券 指定席10.000円 自由席4.000円
当日券 指定席11.000円 自由席5.000円
主催 高安能未来継承事業推進協議会
協力 なにわ文化芸術芸能推進協議会(愛称:カエパス)
電話 山中能舞台06-6692-3825 fax 06-6692-3845 e-mail yama.mar.0825@gmail.com