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「これは常の扇。末広がりというは、末でくわっと開いたを末広がりという」

7/3(日)の「お殿さまが見た狂言」で上演される狂言《末広かり》は、本来「扇」の意味である「末広がり」を別のものと取り違える面白さを描いた狂言です。

「末広がり」自体は、広く扇の別名としても使われます。要(かなめ)の部分で繋ぎ留められた骨を開いて持つ、その形を「末」が広がっていると解釈するのですね。

ただし、狂言《末広かり》の中では、扇を示しながら「これは常の扇。末広がりというは、末でくわっと開いたを末広がりという」というセリフがありますので、扇といっても区別があることが分かります。

「末でくわっと開いた」末広がりは、上の図で示したもので、一般的には「中啓」と呼ばれます。この「啓」は「ひらく」の意味です。上の画像で示した通り、閉じているのに、先が開いている扇です。

「常の扇」は「通常」の意味ですから、一般的な扇ということですが、区別する必要がある場合は「鎮め扇」と呼ばれています。

中啓は、大きく目立つ必要があるためか、舞台用では広く使われます。《末広かり》では登場しませんが、狂言でも鬼などの役の場合には中啓を持ちますし、能で装束を付ける役はそのほとんどが中啓を持ちます。

扇という言葉は、本来、「あおぐ(扇ぐ)」が名詞化してできたものです。歴史的かなづかいで書くと、扇は「あふぎ」、扇ぐは「あふぐ」で、分かりやすいと思います。

しかし、そのうち、本来の用途から外れて、貴族が使用する笏に準ずる儀礼の時の道具となっていき、それが武家やお寺にも広がっていきます。

能や狂言、歌舞伎や日本舞踊、さらに茶道ほか、日本の伝統文化では扇がつきものですが、これも礼儀作法の道具としての意味も大きいと思われます。

この記事を書いた人

朝原広基

「能楽と郷土を知る会」会員。ネットを中心に「柏木ゆげひ」名義も使用。兵庫県三田市出身・在住。大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜となる。能楽からの視点で、歴史の掘り起こしをライフワークにすべく活動中。詳細は[プロフィール]をご覧ください。

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