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新作狂言《くわばら》が、名作の古典狂言《靭猿》とともに神戸で上演

20211120狂言《くわばら》

能楽と郷土を知る会で、兵庫県三田市に伝わる民話をもとに昨年(2020年)秋に制作、三田市内にて初上演した新作狂言《くわばら》(←元の民話についてはこちら)。それが早速、三田市から飛び出して上演されることになりました。

会場は、神戸市中央区・湊川神社神能殿。

《くわばら》の初演は、関係者のみの中での映像撮影のための上演。その後、今年8月には、民話のもととなった三田市桑原の欣勝寺で再演していますが、それは「こうべさんだ能・狂言子ども教室」参加者による略式上演でした。

今回、本式の能舞台で、初演オリジナルメンバーによる初めての一般公演となります。また、主催の「志芸の会」では初の新作狂言の上演機会ともなるとのこと。

必要に応じて前回の試演の演出・セリフなどを見直す可能性もあるともうかがっています。《くわばら》という狂言の成長を見る機会になれば制作企画者として望外の幸せです。


《くわばら》とあわせて上演されるのは、古典狂言《靭猿・うつぼざる》。前半は緊迫感に包まれ、そこから愁嘆場となり、最後は歌と舞で賑々しく終わる劇的な名作です。猿曳・大名・太郎冠者という大人の出演者はもちろん、子方が演じる猿の可愛らしさが印象的な演目でもあります。

しかも、現在となっては上演が珍しい「本型」での上演です。

というのも現在、大蔵流の《靭猿》は、二十二世宗家大蔵虎年が創始した「替装束」の演出での演じられることが多くなっています。替装束は、装束が華やかになり、場面やセリフが整理され、全体の展開が早く、現代にあった上演法であるのは確かですが、今回は「志芸の会」の目的である、古典・古格に立脚した規矩正しい伝承のため、本来の上演形態=「本型」での上演となります。

猿役は、善竹忠亮さんのご長女・善竹結衣さん(6歳)がつとめられます。

野村萬斎さんの言葉として有名な「猿に始まり狐で終わる」は和泉流野村家の言葉ですが、狂言の修行階梯の中で、《靭猿》の猿役が、最初のあたりにある重要な段階であることは、流派が異なっても変わりません。次世代への狂言の継承の意味もこめて、今回上演されます。


古い形を大切にしながらも、創造的な営みとして作られた新作狂言《くわばら》。
古典の名作を、より本来の形で上演し伝えていく本型での《靭猿》。

今後も狂言が末永く守り伝えられていく上で、どちらも重要なことでしょう。今回の上演は、その両輪をはっきりと示す公演となりそうです。

そして当日の解説は、能楽と郷土を知る会の朝原がつとめさせていただきます。新作狂言《くわばら》制作企画者であることから起用していただいたと感じておりますが、なにせ朝原も「本型」の《靭猿》を拝見するのが初めてです。ただただ勉強、という気持ちで、当日、自らの役目を精一杯果たすつもりです。

ご都合のつく方は是非ともご来場いただき、古典と新作の狂言の、創造的伝承の場をともにしていただければ嬉しいです。

公演詳細

2021年志芸の会公演 KUWABARA くわばら

2021年11月20日(土)14時~。湊川神社神能殿(神戸市中央区多聞通3-1-1)

■大蔵流狂言《靭猿》
 大名:牟田素之 猿曳:善竹忠亮 太郎冠者:小林維毅 小猿:善竹結衣

■新作狂言《くわばら》
 神鳴:善竹忠亮 住持:牟田素之 百姓:小林維毅

【監修】善竹忠重
【解説】朝原広基(能楽と郷土を知る会)

【入場料】
 前売券 2,000円
 当日券 2,500円
 学生券(大学生以下) 1,000円
 小学生以下 無料

【主催】志芸の会
【協力】能楽と郷土を知る会・花deN工房 禅

【お申込み・お問い合わせ】 志芸の会 電話 078-841-1645 メール zenchiku10ban@gmail.com

20211120狂言《くわばら》

この記事を書いた人

朝原広基

「能楽と郷土を知る会」代表。ネットを中心に「柏木ゆげひ」名義も使用。兵庫県三田市出身・在住。大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜となる。能楽からの視点で、歴史の掘り起こしをライフワークにすべく活動中。詳細は[プロフィール]をご覧ください。

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