復曲能《鼓の瀧》謡本の販売を始めました
2年前の2022年11月に、兵庫県三田市で300年ぶりに復曲(復活)上演が行われた能《鼓の瀧》の謡本を、Boothで販売を始めました。
地域の歴史と能楽との関わりのことを、少しでも知っていただければ幸いです。
現在、能として演じられている演目は約200程度ですが、室町時代から現代までに作られた曲は3,000を超えると言われています。つまり2,800以上の演目が、過去には存在しつつも、現在は演じられない”廃曲”となっています。
この数多い埋もれた廃曲の中から、弊会の活動地域である神戸三田地域ゆかりの能として、《鼓の瀧》を見出しました。現在も名所として知られる、有馬温泉の鼓ヶ滝を舞台とした能の古曲です。
その《鼓の瀧》の謡本(台本)です。復曲時に可能な情報は全部入れ込んだ解説・注釈付き。あんしんBOOTHパックによる匿名配送も行っています。よろしくお願いいたします。
復曲能《鼓の瀧》謡本販売ページ https://nohgaku.booth.pm/items/6017911
能《鼓の瀧》概要
[登場人物]
前シテ:老人の樵人
後シテ:瀧祭ノ神
ツレ:若い男、または姥、またはい女(今後の復元による)
ワキ:臣下
ワキツレ:臣下の従者
アイ:所の者
[季節]春三月
[場所]摂津国有馬郡鼓の瀧
[曲柄]脇能/初番目物/霊神物
[太鼓]あり
[所要時間]1時間20分程度(今後の復元による)
能《鼓の瀧》あらすじ
臣下が桜の花に誘われ、摂津国の鼓の山(有馬山)に迷い込む。途中で出会った老人は、臣下に山の名前を教え、鼓の瀧へ案内する。老人はこの瀧は古い和歌にも「音に聞く鼓の瀧をうち見ればただ山川のなるにぞありける」と詠まれていることを語り、有馬山の夜桜の美しさを褒め称える。さらに自分は瀧祭の神だと明かし、瀧壺に姿を消す。 月の光に照らされる夜桜の下、瀧祭の神が姿を現し、様々な舞楽を奏して、君の治世を寿ぐのだった。
能《鼓の瀧》の周辺
《鼓の瀧》は、世阿弥の芸談を記した書物『申楽談儀』にも、謡い方の注意が書かれており、世阿弥によって謡われていたことが確実な、由緒のある演目です。内容から、作者も世阿弥であるとする学説が有力です。
しかし、能としての上演は戦国時代の永禄11年(1568)の後、稀曲上演が好まれた江戸時代中期の正徳年間(1711~16)に何度か上演の記録がある他は、能としての上演は行われていません。
ただ能としての上演は絶えていますが、有馬山の夜桜を美しく謡い上げた部分(能楽専門用語でいうサシ・クセ)のみは、流派により「乱曲」「曲舞」などと呼ばれる、最奥の謡物として現在も伝承されています。このことからも、演目としての質の高さは、歴史的・伝統的に評価されてきたといえるでしょう。
書籍データ
発行日 2022年11月
発行元 能楽と郷土を知る会
サイズ B5判 中綴じ32ページ(表紙含む)