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神戸の翁面掛式

湊川神社翁面掛式・能楽師入場の図

神戸のいくつかの神社では正月に「翁面掛式」という行事が行われます。

これは能楽の《翁》を奉納するものです。《翁》では神体である翁面をかけることで、演者が神と一体化して天下泰平・国土安穏を祈祷しますから、「翁面掛式」なんですね。

私が知っているものでは、1月2日に生田神社で10時から、1月7日に湊川神社で11時から、1月10日に長田神社で10時半から行われます。見落としているだけで、他の神社でも行われているかもしれません。もしご存知でしたら、お教えいただければ幸いです。

実は「面掛」という名前は、実は兵庫県の南播磨や西摂津の地域では多く見るのですが、他の地域ではあまり見られない名前です。能楽の《翁》や、同系統の民俗芸能を神社で奉納することは全国で広く行われていますが、多くの場合、「翁舞」または「三番叟」などと呼ばれているようで、「面掛」と称する例は少ないのです。

そんなわけで、「面掛」も地域性の強い名前として、兵庫県民としては押して行きたいところです。

湊川神社の翁面掛式に行ってきました

さて、上記で触れました翁面掛式のうち、今年は湊川神社のものに行ってくることができましたので、以下にレポートさせていただきます。

湊川神社では、11時から拝殿にて「氏子崇敬者繁栄祈願祭並びに翁面掛式」という形で、氏子さんや崇敬企業・団体などの繁栄・発展を祈る神事の中で行われます。

まず、神職による修祓や祝詞奏上が行われ、また4人の巫女さんによる浦安の舞が続いて、その後に、奉納者の神戸観世会の能楽師が入場して、《翁》の奉納が行われました。写真は、能楽師入場の様子です。

湊川神社での翁面掛式には、笛と小鼓(一丁)の囃子がありました。前回紹介した姫路・英賀神社の面掛式では囃子はなかったので、その分、本式の翁に近いですね。とはいえ、「そよや」という謡の後、囃子のみの演奏で舞われる「翁の舞」はない形でした。

面箱は、本殿の奥から神職の方が持ってきて、後見に渡す形。舞い終わった後も、再び神職に渡して、奥に収めていました。最初に書いた通り、《翁》の面は神体、つまり神社の奥にあるのが本来の形ですから、神社ならではの形だなと感じました。

翁でお正月…良いものです

「とうとうたらりたらりら」という不思議な謡から始まる《翁》は、能楽の中でも神聖な演目として特別扱いされる曲です。それだけに、演じる能楽師も緊張感を以てつとめています。その緊張感がまた神聖さにもつながっているように感じます。

まして、神社の神事にて行われると、その緊張感と神聖さが増すように感じます。《翁》で感じる新年というのも素敵ですので、お近くの方は是非とも。

この記事を書いた人

朝原広基

「能楽と郷土を知る会」会員。ネットを中心に「柏木ゆげひ」名義も使用。兵庫県三田市出身・在住。大学の部活動で能&狂言に出会ってから虜となる。能楽からの視点で、歴史の掘り起こしをライフワークにすべく活動中。詳細は[プロフィール]をご覧ください。

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