出演者の紹介 善竹忠重氏
「お殿さまが見た狂言」(7月3日14時~、於・三田市総合文化センター[郷の音ホール]小ホール)に、今回出演いただくのは、神戸を中心として活躍される善竹忠重(ぜんちく・ただしげ)氏とそのご一門です。
善竹忠重氏は、能楽師狂言方大蔵流。1947年生まれ。重要無形文化財総合指定保持者。最初の人間国宝となった善竹彌五郎(1883~1965)の孫にあたり、先代善竹忠一郎(1910~1987)のご次男です。
「能楽と郷土を知る会」代表の朝原と善竹忠重氏の縁は、私が所属していた大学の能楽部で、狂言を指導されていたことに始まります。(そのため、以下は忠重先生と書かせていただきます。)
自身は狂言を習うことはありませんでしたが、見ること知ることは大の好きでしたので。忠重先生が稽古合宿などにお越しいただくと、根掘り葉掘りと様々に質問をする馴れ馴れしく生意気な学生でした。
今回「お殿さまが見た狂言」にご出演をお願いさせていただいたのは、学生時代以来のご縁と、三田に近い神戸を活動の地盤とされていることが直接のきっかけですが。
単純にいえば、個人的には「狂言なら善竹家が好き!」「善竹忠重先生の狂言が好き!」というのが大きな理由としてあります。
関西にはいくつも狂言の家が存在し、それぞれ魅力ある芸を発揮されて活躍していますが、その中で善竹家は、古典・伝統としての型を大切にし、単なる派手さを嫌いつつも、繊細な内面表現を重んじるところが特徴だと感じています。
その中でも忠重先生は、偉そうなことを書きますが、重ねられた年輪の中で、善竹家の芸風の完成の域にもっとも近い役者のお一人だと感じています。
ただ、何事も控えめなお方なので、あまり表だった評価がなされていないように感じるのが、とてももったいない。
「お殿さまが見た狂言」の企画を始めた際のことを告白いたしますと、集客の見通しもなく、予算の厳しい会でもあるので、最初は忠重先生のご子息・善竹忠亮(ぜんちく・ただあき)さんを中心とした若手中心でお願いしたい、と申し上げたのですが。
忠重先生から「私も参ります」と仰せいただきまして。そのお言葉に甘えて、今回の配役が決定しました。
今回、忠重先生が演じられる《末広かり》のシテ(主役)・果報者は、セリフの量ではアド(相手役)である太郎冠者より少ないですが、舞台全体を包むような祝言性を出さねばならない難しい役。
その役を忠重先生が演じられる。しかも自らの企画で!と思うと、楽しみでなりません。
脇を固められるのは忠重先生のご一門である「志芸の会」のメンバー。三田在住の尾鍋智史(おなべ・ともふみ)さんのほか、能楽協会神戸支部所属の狂言方としてプロの舞台で活動されています。
この文章も、できるだけ客観的に書こうと努めたのですが、好みの狂言役者である忠重先生のことを無理に書くと、ウソの文章になりそうですので、もう開き直って主観的に書かせていただきました。
忠重先生の狂言が、安価に三田で見られる!こんな機会はなかなかないと思いますので、是非ともこの機会を逃さずご覧くださいませ。